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犬の病気事典:腫瘍の疾患

インスリノーマ

概要

膵臓には内分泌と外分泌の2つの機能があります。内分泌の機能は主に血糖値のコントロールを行うインスリン(ホルモン)などを血液中に放出すること、外分泌の機能はタンパク質やでんぷん、脂肪などの消化を助ける膵液(消化液)を膵管という管でつながった十二指腸に分泌することです。
インスリノーマは、膵臓の内分泌の細胞のなかでインスリンの分泌を担うβ(ベータ)細胞にできる腫瘍で、インスリンを過剰に分泌してしまうことで主に低血糖の症状が起きるまれな病気です。犬のインスリノーマはほとんどが悪性で、発見された時点で周囲組織(所属リンパ節や肝臓など)に転移している場合が多いです。
正常な膵臓であれば、血糖値が下がるとインスリンの分泌はおさえられ、血糖値はそれ以下にはなりません。しかしインスリノーマがある膵臓は、血糖値が低下している場合でもインスリンを分泌し続けてしまい、低血糖が発生します。一般的に血糖値が70mg/dL以下になると低血糖と診断され、60mg/dL以下になると低血糖の症状があらわれ始めます。注意しないといけないのは、インスリノーマ=低血糖ですが、低血糖=インスリノーマではないということです。低血糖を起こす原因はさまざまあります。低血糖がある場合は、(もちろんインスリノーマも含めて)総合的に検査を行って診断をつけていくと良いと思います。
インスリノーマは発見しにくい腫瘍です。初期の段階では超音波検査で確認できないことが多く、血液検査(血糖値、インスリン濃度)やCT検査などを行うことで精度が高まります。特にCT検査は、癌の大きさや転移がないかを高精度に診断することができます。手術などを含めた今後の治療方針を立てる場合に有効な検査だと思います。
インスリノーマは悪性度が高く、完治が難しい病気です。病気を受け入れて、ご自身の犬が一番幸せだと思う治療を専門家とよく相談をして、余生を過ごすと良いでしょう。

症状

主に低血糖の症状がみられます。異常な食欲が出たり、ボーっとして元気がなくなり、体を触るといつもより冷たく感じます。ふらつき(特に後ろ足)が見られたり、筋肉の震えが起こる場合もあります。重度な低血糖が起きた場合は、よだれが出たり、失神したり、けいれん発作を起こしたりします。慢性的で長期的な低血糖に慣れている犬では、空腹や食事後、興奮、運動などによってさらに低血糖が進んだときに症状が現れる場合が多いです。

対象

平均すると8〜10歳の高齢になって発症します。体格に関係なく多くの犬種に発生しますが、アイリッシュ・セター、ゴールデン・レトリーバー、ボクサー、ジャーマン・シェパードなどの大型犬に最も多く発生します。インスリノーマを発症した犬は、平均すると発見されてから1年程度で死亡します。若齢で発症した場合は、高齢で発症した犬より短命な場合が多いです。

予防、治療

予防法はありません、インスリノーマが疑われる場合は、早めに検査をして治療を開始しましょう。
治療は、内科療法と外科療法があります。内科療法は症状を緩和するための治療で、主に血糖値のコントロールが行われます。高タンパク質、低炭水化物に調整された少量の食事を頻回(1日3〜6回)に与え、空腹を避けます。運動や興奮もできる限り控えましょう。こうした管理だけで満足した維持ができる犬もいます。うまく管理できない場合、つまり低血糖の症状が見られる場合は、薬物治療を検討します。インスリンの合成や分泌をおさえる薬、肝臓での糖分生産を促進する薬などが使用されます。
外科療法はインスリノーマを摘出する手術です。手術をすると生存期間が長くなり、症状をおさえる効果が期待できますが、やがて再発してほとんどの犬で完治は期待できません。犬のインスリノーマは「しこり」として膵臓にある場合や、細かく散らばって存在し、確認が困難な場合があります。リンパ節や周囲の組織に転移を起こしている場合も非常に多いです。単独のしこりが確認できる場合など摘出可能な腫瘍は完全に摘出しますが、目に見えない腫瘍がある場合や摘出が困難な場合は、膵臓を一部分摘出して症状を緩和させる場合があります。手術を検討する場合は、目的を十分に理解した上で専門家とよく相談し、CT検査など詳細な画像診断で現在転移がないか、摘出可能か、手術や麻酔へのリスクなどをふまえた上で検討すると良いと思います。

監修

白神 久輝 先生

埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。

「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気も掲載されていることがあります。

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