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猫の病気事典:循環器の疾患

肥大型心筋症

概要

猫の心臓の病気の中で最も多い病気が心筋症です。心筋症とは、心臓の筋肉に異常が起こることで心臓の働きが低下する病気です。心臓の筋肉が分厚くなるタイプ(肥大型)や、薄くなるタイプ(拡張型)や、固くなるタイプ(拘束型)などがあります。
肥大型心筋症は、心筋症の中で最も多いタイプで、左心室(全身に血液を送るための部屋)の心筋の肥大が特徴です。心臓は筋肉によって収縮や拡張を繰り返し、血液を送り出したり取り込んだりしています。ほかのもので例えるならば、ゴム風船を膨らませたり縮ませたりしている動きに似ています。ゴム風船のゴムが異常に分厚かったら、風船を膨らませることも空気を送り出すことも難しくなります。これがまさに肥大型心筋症で起こる問題点なのです。
心臓は4つの部屋に分かれています。この部屋と血液の流れは、全身から血液が戻ってくる部屋(右心房)→肺に血液を送る部屋(右心室)→肺から血液が戻ってくる部屋(左心房)→全身に血液を送る部屋(左心室)です。この中の左心室の筋肉が肥大すると、左心房から左心室への血液の流れが滞り、全身に送る血液も少なくなってしまいます。左心房での血液の停滞は肺の高血圧を招き、肺がむくみ、水が溜まり(肺水腫)、呼吸困難が起こります。右心房や右心室にも血液のうっ滞が起き始めると、胸水や腹水などもたまり始めます。また、この病気がきっかけで血液の乱流が心臓内で起こり、血栓が作られる場合もあり、血栓が大動脈に詰まって後ろ足が麻痺する場合もあります。
原因は遺伝的なものが疑われていますが、はっきりとは解明されていません。
この病気の生存期間については、無症状な猫の中央生存期間は1830日以上です、症状が出始めると92日、血栓症を合併した場合は61日です。このデータから考えても症状が出た時点で重症です。できる限り早めに病気を発見し、重症化する前に治療に入ると良いと思います。初期の症状はほかの心筋症と同じく無症状で、心雑音が聞こえる程度です。好発品種では、定期的に心臓のチェックをしておくと良いでしょう。

症状

初期は無症状な場合が多く、心臓の雑音がわずかに聞こえる程度です。重症化した場合は、元気や食欲がなくなり、咳や苦しそうに口を開けて呼吸(開口呼吸)したり、呼吸が速くなったり、呼吸困難や舌が青紫色になったり(チアノーゼ)、血栓症を起こしたり、後ろ足が麻痺したりします。このような症状が確認された場合は、命に関わる緊急事態だと思ってください。

対象

好発品種としては、アメリカンショートヘアー、メインクーン、ペルシャ猫などが挙げられます。年齢は数ヵ月齢〜17歳の広範囲な年齢の猫で発症が見られます。性別では、オスに発症が多い病気です。

予防、治療

予防法は、現時点ではありません。心雑音がある場合や症状がある場合は、早めに心臓の精密検査を行い治療しましょう。
治療では、心筋症の進行を止める薬はありませんが、心筋症に伴って起こる症状の緩和を飲み薬で行います。全身に血液を送りやすくし、肺の高血圧をおさえる心臓薬や抗不整脈薬、うっ血性心不全や肺水腫に対して利尿剤、血栓症の予防に抗血栓薬などが利用されます。血栓症がすでに起きている場合は、血栓溶解剤の投与が検討されます。

監修

白神 久輝 先生

埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。

「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気も掲載されていることがあります。

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