2018/06/19

獣医さんに聞く!犬の妊娠・出産について知っておきたいこと

2018/06/19

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 愛犬が出産をし、かわいい子犬が家族になる…。とっても素敵なことですね。しかし出産はどんな動物にとってもリスクがあるもの。「犬は安産だから大丈夫だろう」と安易に考えていると、大変なことになります。犬の妊娠・出産についての知識と、飼い主さんがしておくべき準備や心構えについて、獣医師の三宅先生にうかがいました。

犬の「出産適齢期」は?

遅くとも中年期までに出産させたほうが、リスクは下がります。

遅くとも中年期までに出産させたほうが、リスクは下がります。

—犬は、生後何ヵ月くらいから妊娠・出産できるのでしょうか?

 初回の発情出血があれば肉体的には妊娠できる状態ですが、若すぎても体への負担が大きいので、2回目以降の発情で妊娠させることが推奨されます。

—交配からどのくらいの期間で出産しますか?

 交配から63日程度で出産します。早産などのケースはあまりなく、ほとんどの場合は予定日通りに出産します。

—何歳くらいまで出産できるのでしょうか?

 発情自体は10歳を過ぎても見られますが、健康に出産するとなると、6〜7歳の中年期まででしょうか。人間同様に、犬も高齢になると出産リスクが高くなります。

 犬の発情出血については「犬の生理の症状や期間って?対処方法と出血する病気との見分け方」もあわせてご覧ください。

「犬は安産」は本当?

犬も他の動物同様に、出産時のリスクがあります。

犬も他の動物同様に、出産時のリスクがあります。

—「犬は安産の守り神」というイメージがありますが、実際に犬は安産なのでしょうか?

 犬は一度にたくさんの子どもを生むことからそのようなイメージがついたのかもしれませんが、実際には必ずしも安産だというわけではありません。他の動物と同様に出産時のリスクはありますし、小型犬は難産になりやすい傾向にあります。

—どのような犬種が難産になりやすいのでしょうか?

 小型犬の中でも特に、腰が細いけれど頭が大きい、例えばパグやチワワは難産になりやすいですね。胎児の頭の大きさに対して、母犬の骨盤が狭く、産道を通ることができないため、帝王切開が必要になることもあります。腰が細く頭が大きい犬の代表はブルドックですが、ブルドッグは、帝王切開でなければ出産できません。同様にフレンチ・ブルドッグも帝王切開になることが多いです。

—難産になりやすい犬は、事前に入院して出産するのでしょうか?

 いえ、基本的には自宅で自然分娩です。しかし、例えば出産予定日に飼い主さんが仕事などで不在になる時間帯がある場合、動物病院に預けることを推奨している獣医師もいます。

パグやチワワなど頭の大きい犬種は、難産になりやすい傾向があります。

パグやチワワなど頭の大きい犬種は、難産になりやすい傾向があります。

—ちゃんと妊娠しているのか、胎児が何匹いるのかなどは、いつごろわかるのでしょうか?

 交配後22〜30日程度で妊娠が確認できますので、動物病院で超音波検査を受けてください。

—胎児がオスかメスかは、超音波検査でわかりますか?

 それは、ほとんどわからないと思います。

—妊娠確定後、定期的に診察が必要でしょうか?

 妊娠が確定してから約1ヵ月で出産になるので、通常は2〜3回の診察を受けることが多いでしょう。
 胎児の頭が母親の骨盤を通る大きさかどうか心配な場合は、出産直前にレントゲン検査をすることもあります。

—妊娠中は、食事や生活などを変えたほうが良いのでしょうか?

 食事量や運動など、特に変える必要はありません。高栄養のフードを食べ、いつもどおりに生活してください。

出産時のトラブルに備えておこう!

母犬が母乳を与えられない場合は、飼い主さんが世話をしなければなりません。

母犬が母乳を与えられない場合は、飼い主さんが世話をしなければなりません。

—犬の出産にあたり、飼い主さんが準備をしておくことはありますか?

 まず、「犬は安産だから、妊娠したら安全に生まれるだろう」と安易に考えないことです。出産にはリスクがつきものです。万が一の場合に備えて、かかりつけ医と相談しながら、夜間や救急対応に備えましょう。

 そして、生まれてきた子犬をどうするのか。引き取り手を探しておくのか、自宅で飼育するのか、しっかりと考えてください。

 帝王切開になった場合、産道を通らないことで母乳が出づらくなったり、母犬が育児放棄をしたりすることがあります。そのような場合は、子犬の世話をすべて飼い主さんが負担することになりますので、それが可能かどうかも事前に考えておいたほうが良いですね。

—出産時に、どのような様子が見られたら病院に連絡すべきでしょうか?

 母犬がいきんでいるのに胎児がなかなか出てこない、頭まで出てきたけれど途中で止まってしまった、母犬が苦しそうにしている、などの場合は、かかりつけの動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。

—帝王切開手術は、どのくらい入院するのでしょうか?

 だいたい2〜3日程度の入院になります。母犬は入院しますが、出産した子犬は飼い主さんが自宅に引き取って世話をしなければならないこともあるので、そのための準備が必要です。

—出産を経験した犬は、していない犬よりも寿命が短くなる、などのデータはありますか?

 そのようなデータが存在するかどうかは分かりかねますが、出産は母犬の身体に大きなストレスをかける重労働です。特に、発情のたびに妊娠出産を繰り返すような無理な出産をしている場合は、リスクが高まる恐れがあります。

 しかし、そうではないのであれば、出産の予定がないメスに避妊手術をさせるかさせないかの方が、犬の健康には大きな意味があると思います。

健康リスクや子犬の生活などを十分に考慮した上で、出産させましょう。

健康リスクや子犬の生活などを十分に考慮した上で、出産させましょう。

—出産の予定がない場合、避妊手術は必要ですか?

 避妊手術をすると、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍の発生率が下がります。特に初回発情前に避妊手術をしておくと乳腺腫瘍の発生率が低くなるというデータもありますので、交配の予定がないのであれば、早めの手術をおすすめします。

 また、オスとメスを多頭飼育している場合、発情のたびに交配・妊娠・出産をすることが考えられ、メスの身体に大きな負担となるおそれがあります。また、交配に至らずとも、発情中のメスのにおいをオスが嗅ごうとして、しつこく追い回すことはメスにとってのストレスになりますし、発情中のメスがいるのに交配をできないことはオスにとっても非常に大きなストレスです。

 どんな動物でも、リスクのない出産はありません。愛犬の健康のためにも、「きっと大丈夫だろう」と安易に考えず、想定されるリスクを検討し、かかりつけ医に相談して正しい知識を得てから、出産をさせるようにしてください。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生

日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。

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