2021/8/26

猫のストレスを見逃さない!ストレス解消のカギは「ハンターの本能」

2021/8/26

猫のストレスを見逃さない!ストレス解消のカギは「ハンターの本能」

 大切な愛猫が、あまり見かけない行動をしていることはありませんか?繊細な部分も持ち合わせている猫にとって、季節の変わり目やちょっとした環境の変化でしぐさや行動に変化がおこる場合があります。ストレスだけでなく病気のサインが紛れている可能性もあるため、ストレスサインとなる行動の変化を見つけるポイントや、ストレス解消法についてご紹介します。

猫のルーツと現代の暮らし

 「猫は自由に行動したい動物だから、家で飼うとストレスになる」と誤解されることがありますが、実は室内飼いの方が外飼いよりも寿命が長く、快適に暮らすことができます。しかし、猫のルーツを辿ると、自由なハンターとしての習性を備えていることも確かです。
 私たちが家族として迎え入れるイエネコの祖先は、西アジアから北アフリカ近辺に生息していたリビアヤマネコだと言われています。リビアヤマネコはネズミが主食でハンティングを得意とし、有害なネズミを捕ってくれることから人間に重宝されてきました。共に暮らし、可愛がられることによって、現在のイエネコへ進化したと考えられています。
 元々ハンターだった猫は、獲物に忍び寄って捕まえる機会や、上下運動をする場所がないとストレスを感じてしまいます。また大きな音がしたり、見知らぬ人が急にテリトリーに入ってくると強く警戒し、ストレスの元になります。
 猫のストレスを減らすためには、ハンターとしての習性を踏まえて環境を見直すことが大切です。

猫のストレスサインをチェック

 愛猫の行動に変化が現れたらストレスのサインかもしれません。食事や排泄の他、飼い主さんへの態度や爪とぎの様子からもストレスを察知することができます。

いきなり噛みついてくる

 じゃれているときの甘噛みとは異なり、突然ガブリと強く噛みついてくるときは、何らかのストレスを感じているのかもしれません。

前足など、身体を舐め続ける

 きれい好きの猫は、普段から自分の身体を舐めて毛繕い(グルーミング)を行います。しかし、過剰に身体をなめたり、尻尾を噛んだりする自傷行為が見られたらストレスを疑いましょう。ザラザラした猫の舌で身体を舐めすぎると、脱毛や皮膚炎がおこる恐れもあるため早めの対処が必要です。逆に、毛繕いをしなくなったときも注意が必要です。

猫が過剰に毛繕いをしていたら、皮膚や毛の状態を確認し、異常があれば動物病院を受診しましょう。

猫が過剰に毛繕いをしていたら、皮膚や毛の状態を確認し、異常があれば動物病院を受診しましょう。

活動量の変化

 猫は特定の時間帯に急に走り回ったりする習性があります。しかし、走り回ることが増えたり、大きな声で鳴いたり、同じ場所を行ったり来たりするなど、落ち着きがないのはストレスが原因かもしれません。いつもと異なる場所で爪とぎをするときも注意が必要です。
 また、高齢でもないのに高いところに上らない、動く物に興味を示さない、短距離ダッシュをしないなど、猫らしい活発な行動が減ってきた場合もストレスや病気のサインかもしれません。

食欲の変化

 いつも通りの食事をあげているのに余計に食べ物をほしがったり、布などをかじる「ウールサッキング」はストレスの兆候かもしれません。
 また、猫も人と同じようにストレスから食欲不振になることがあります。猫の健康管理も兼ねて、食事やおやつの記録をつけておきましょう。他にも暑い季節は夏バテの可能性もあるため注意が必要です。
 食欲が異様に増す、食べたがらないなどの食欲異常が続いたり、嘔吐などの症状が見られる場合にはすぐに動物病院を受診しましょう。

 夏バテについて詳しくは「猫の夏バテにはどんな症状があるの?獣医さんがすすめる予防と対処法」をご覧ください。

トイレ以外での排泄

 猫はきれい好きな動物ですが、ストレスが溜まるとトイレ以外の場所でウンチやオシッコをしてしまうことがあります。他にも、部屋のあちらこちらにオシッコを吹きつけるスプレー行為を引き起こすことがあります。どのタイミングでスプレーをするのか観察し、ストレスの原因を見極めましょう。
 また、排泄の失敗は膀胱炎等、泌尿器系疾患の恐れもあります。注意して観察し、悪化する前に動物病院を受診しましょう。

猫のストレス解消方法

 ストレスをためすぎて病気になる前に、暮らしやすい環境を整えたり、飼い主さんの対応を見直したりして、愛猫が安心して暮らせるように工夫してみましょう。

留守の際はペットシッターを活用する

 猫は環境の変化に強いストレスを感じる動物です。特にシニアの猫や持病がある猫の場合は注意してあげましょう。旅行や出張で一定期間留守にする場合は、愛猫を同伴させたりペットホテルに預けるより、自宅で留守番をさせたほうがストレスを感じにくいかもしれません。愛猫と面識のある知人に世話を頼んだり、ペットシッターの活用を検討しましょう。

環境の変化に対応する

 来客のときや近所で工事があって大きい音がしているときなど、猫が物陰に隠れてしまう場合があります。無理に引っ張り出さず、自ら出てくるのを待ちましょう。

猫からすると「安全な場所に隠れている」状態。無理に出そうとせず、落ち着くまで見守りましょう。

猫からすると「安全な場所に隠れている」状態。無理に出そうとせず、落ち着くまで見守りましょう。

 また、引っ越しをする場合はどうしても猫にストレスが掛かってしまいます。新居に愛猫や飼い主さんの匂いがついた小物を持って行くなど、できるだけ今までと同じ環境を再現するとストレスが軽減されるようです。

 猫との引っ越しについて詳しくは、「猫にとって引っ越しはストレス?猫との引っ越しで注意したいポイント」をご覧ください。

人間の行動を見直す

 多くの猫は穏やかな人を好みます。なるべく大きな声や甲高い声を出さずに優しい声で話しかける、慌ただしくせずにゆっくり動く、急にさわらないなど、穏やかな対応を心がけてみましょう。
 また、猫をなでていると、突然噛みつかれたり蹴られたりすることがあります。これは愛撫誘発性攻撃行動と呼ばれ、猫にとってなでる時間が長すぎたときや、いやな場所を触られたときに起こるようです。いずれにせよ猫のストレスにつながるため、ほどほどで切り上げた方がいいでしょう。

コミュニケーションの時間を作る

 猫もスキンシップで愛情を感じてリラックスをします。ただし、人に触られることが苦手な猫の場合は、猫の方から近づいてくるのを待ちましょう。猫が触ってきたら、飼い主さんの方からは手を伸ばさず、猫のやりたいようにさせてあげましょう。
 また、短時間でもいいので、毎日一緒におもちゃで遊びましょう。ネズミ型や猫じゃらし型のおもちゃを使って、疑似ハンティングを体験させてあげるのがおすすめ。
 ただし、あまり猫を驚かせるとストレスの原因になってしまいます。部屋の隅に追い詰める、大声を出す、箱や袋を突然被せるなど、猫がビックリすることは避けましょう。

おもちゃで狩りを再現。ストレス解消にピッタリな上、運動にもなって一石二鳥です。

おもちゃで狩りを再現。ストレス解消にピッタリな上、運動にもなって一石二鳥です。

避妊・去勢手術を行う

 避妊・去勢手術を行うことで、猫の性的ストレスを回避することができます。できれば初めての発情期が訪れる前に手術を行いましょう。

 避妊・去勢手術について詳しくは、「猫の避妊・去勢手術はしたほうがいい?獣医さんに聞いてみました」をご覧ください。

上下に運動ができる仕掛けを用意する

 猫はハンターだった頃の名残で高いところが大好きです。キャットタワーやステップを設置して、上下に運動できる仕掛けを作っておきましょう。

子猫のうちは低く、高齢になってきたらステップを小刻みにするなど、猫の成長にあわせてステップやタワーを用意しましょう。

子猫のうちは低く、高齢になってきたらステップを小刻みにするなど、猫の成長にあわせてステップやタワーを用意しましょう。

安心できる場所を複数用意する

 家の中の複数箇所に猫がゆっくり安心できる場所を作ってあげましょう。日当たりのいい窓辺、涼しい廊下、高い本棚の上、隠れられる物陰など、愛猫が好む場所を見つけて、お気に入りのベッドやブランケットを置いてあげるといいでしょう。
 また、猫の習性として、ほら穴のような狭くて隠れられる場所を好みます。部屋の隅にキャリーバッグを設置してあげるのがおすすめです。キャリーに慣らしておくと、万が一の災害で避難するときにも便利です。

爪とぎ場所を複数用意する

 猫の爪とぎは、爪のお手入れだけではなく、縄張りの主張や気分転換、自己主張、ストレス解消など様々な意味があります。しかし、家具や畳などで爪を研いで飼い主さんに怒られると、ストレスの原因になってしまいます。猫のためにも飼い主さんのためにも、思う存分研げるように市販の爪とぎを室内の複数箇所に設置しましょう。
 市販の爪とぎを使わず、いつも同じ柱や家具などで爪を研ごうとする場合には、その場所に麻紐や目の粗いカーペット、コルクシートなどを巻き付けてあげるとよいでしょう。

環境の工夫と飼い主さんの愛情でストレスフリーに!

 猫のストレスは、ちょっとした環境作りや対応の工夫で軽減することができます。しかし、行動や食事、排泄に大きな異常が見られる場合は、病気の恐れもあるため、早めに動物病院を受診しましょう。なかなかストレスが解消されない場合も動物病院で相談してください。
 猫は単独行動を好む動物ですが、社交性も備えています。猫同士で小さなグループを作ったり、共に暮らす人や犬との間に絆を結び、愛情を感じることが猫の幸せに繋がります。環境を工夫して十分な愛情を注ぐことで、猫にとってストレスフリーでより幸せな生活が送れるようになるでしょう。

参考
ねこの適正な飼養管理を推進するために(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/cat.html
猫の適正譲渡ガイドブック(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2806a.html

運営・監修 「いぬと暮らす、ねこと暮らす。」編集部

動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。

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