2018/10/02

猫パルボウイルス感染症の感染経路・症状・治療法・予防法は?

2018/10/02

猫パルボウイルス感染症の感染経路・症状・治療法・予防法は?

 都内の猫カフェで複数の猫が感染し、死に至ったという恐ろしい病気「猫パルボウイルス感染症」。どのような経路で感染し、どのような症状が出るのでしょうか?獣医師の三宅先生に、猫パルボウイルス感染症についてお話をうかがいました。

猫パルボウイルス感染症ってどんな病気?

—猫パルボウイルス感染症とは、どのような病気なのでしょうか?

 猫パルボウイルス感染症は「猫汎白血球減少症」や「猫ウイルス性腸炎」などとも呼ばれる病気です。

 猫がウイルスに感染すると、ひどい嘔吐や下痢症状が急激に出ます。症状が重症化すると数日間で死に至ることも珍しくありません。
 特に子猫が感染すると、かなり高い致死率となっています。

—どのような経路で、猫パルボウイルスに感染するのでしょうか?

 猫パルボウイルスに感染した猫の嘔吐物や下痢便から感染しますが、ウイルスの感染力が非常に強く、自然界では1ヵ月くらい感染力を持ったまま存在できると言われています。

 ウイルスが含まれた猫の嘔吐物や下痢に直接触らなくても、感染した猫のいる環境下に置かれたもの、おもちゃや毛布などに接触するだけで感染することもあります。

急激な嘔吐や下痢によって衰弱し、重症化すると死に至ります。

急激な嘔吐や下痢によって衰弱し、重症化すると死に至ります。

—ウイルスの潜伏期間はどれくらいでしょうか?

 大体数日から1、2週間程度です。

—人間や他の動物もウイルスに感染することはありますか?

 犬にもパルボウイルス感染症はありますが、ウイルスの型が違うので猫以外で感染することはありません。

 しかし、人間が猫同士の感染を媒介してしまうことはあります。
 例えば感染猫のいる場所を通った際に靴の底にウイルスが付着して別の場所にウイルスを運んでしまったり、感染猫に触った手で他の猫をなでて感染させてしまう、という可能性も十分にあります。

—掃除して除菌すればウイルスは消えますか?

 感染した猫に接触した場合、石鹸で手を洗ったくらいではウイルスは消えませんので、注意が必要です。

 猫パルボウイルスは、石鹸やアルコールでは死滅しません。嘔吐物や下痢便が付着したものは、処分したほうが安全です。
 床や壁などは、ご家庭にある塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)などでしっかり消毒してください。使用場所にあわせて、10倍~50倍程度に希釈します。希釈液につけておけないような物に対しては、塩素系漂白剤をスプレーにして、散布するのも良いでしょう。

猫パルボウイルス感染症の治療法は?

—感染して発症した場合、どのような治療法がありますか?

 発症したら、入院して治療することになります。抗ウイルス剤はありませんので、下痢や嘔吐などに対する対症療法しか方法がありません。白血球が減少してしまうので、輸血が必要なこともあります。

 下痢や嘔吐がおさまったらその後は猫が持っている免疫力でウイルスが失活し、回復することもあります。
 しかし、回復できずに数日で亡くなってしまうことも珍しくありません。特に体力のない子猫は、致死率がとても高いです。

対症療法を行って体力の回復を待つ以外、治療方法はありません。

対症療法を行って体力の回復を待つ以外、治療方法はありません。

—回復することができたら、その後は普通に生活できますか?

 回復してウイルスが体内から消えれば、通常の生活に戻れます。後遺症などはありません。

猫パルボウイルス感染症の予防法は?

—猫パルボウイルスへの感染は、どのように防げば良いのでしょうか?

 ワクチンを接種していれば、猫パルボウイルスに感染することはほとんどありません。
 生まれてすぐから生後1ヵ月くらいまで、子猫は母猫からの「移行抗体」で守られています。それが切れた頃にワクチンを接種し、その後も定期的に接種を続けていれば、猫パルボウイルスへの感染の心配はほとんどありません。

 猫パルボウイルスのワクチンは、どのような環境下で飼育されていても接種したほうが良い「コアワクチン」の1つで、いわゆる「3種混合」ワクチンに必ず含まれています。

 飼い主さん自身がウイルスを運んでしまう可能性もあるため、「完全室内飼育だからワクチン接種は必要ない」と考えず、コアワクチンは必ず接種するようにしましょう。

 猫のワクチン接種についてくわしくは「猫を感染症から守るワクチン接種。種類、費用、副作用のリスクは?」もあわせてご覧ください。

ワクチン接種が、唯一にして最大の予防法です。

ワクチン接種が、唯一にして最大の予防法です。

—ワクチンを接種していれば、感染した猫と接触しても大丈夫ですか?

 ワクチンは100%ではありませんので、接触は控えたほうが良いでしょう。ごくまれに、ワクチン接種をしても、ウイルスに対する抗体の量が増えない(抗体価が上がらない)猫もいます。多頭飼育の場合、感染猫が出た場合は隔離してください。

—感染予防のために、飼い主さんができることはありますか?

 嘔吐や下痢をしている野良猫などには近づかないようにすること、そして何より、きちんと予防接種をすることです。

 猫パルボウイルス感染症は、ワクチン接種で防げる病気です。大切な飼い猫のためにも、かかりつけ医と相談しながら定期的な接種を行ってください。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生
日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。
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