2018/04/26

猫エイズについて知ろう!感染経路や予防接種、発症リスク

2018/04/26

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 人間だけでなく、猫もエイズにかかることがあります。猫エイズ(猫後天性免疫不全症候群)とは、どのような病気なのでしょうか?感染予防のために必要なこと、キャリア(猫エイズの菌を持つ猫)になった場合の生活環境や、できるだけ発症リスクを下げる方法について、獣医師の三宅先生にうかがいました。

猫エイズとはどんな病気?

—猫エイズ(猫後天性免疫不全症候群)とは、どのような病気でしょうか?

 猫免疫不全ウイルスが原因で起こる症状を「猫エイズ」と呼んでいます。猫免疫不全ウイルスに感染した猫は、猫エイズの菌(ウイルス)を持つ、いわゆるキャリアとなります。この段階では、猫自身の免疫がウイルスの活動を抑え込んでいるため、何の症状も出ていません。やがてウイルスが活動を始めると、「発症」となります。

 発症すると免疫機能が低下するため、「日和見感染(ひよりみかんせん)」という、通常では病気の原因にならないような、ちょっとした病原体に反応する状態になります。
 その結果、腫瘍や口内炎、貧血、下痢や食欲不振など症状が出て、症状が進行すると最終的にはほぼ100%に近い確率で亡くなります。

—すべてのキャリアが、猫エイズを発症してしまうのでしょうか?

 猫エイズウイルスを持っているすべての猫が、発症するわけではありません。キャリアであっても、ずっと発症せずに、そのまま天寿を全うする猫もいます。

猫エイズの感染経路は?

—猫エイズウイルスには、どのようにして感染するのでしょうか?

 猫エイズキャリアの猫による咬傷で感染します。猫エイズウイルスは感染力の強い病原体ではないので、空気感染や接触感染はしません。

 室内飼育で猫エイズキャリアの猫と接触する機会がなければ、猫エイズウイルスに感染するリスクはほとんどありません。

猫エイズは基本的に、咬傷によって感染します。

猫エイズは基本的に、咬傷によって感染します。

—では、猫エイズのキャリアはどこにいるのでしょうか?

 完全室内飼育の場合は猫エイズウイルスに感染する機会がほとんどありませんが、野良猫の中には、猫エイズキャリアがいます。

 日本は野良猫が多いので、野良猫同士の喧嘩や、猫エイズキャリアの母猫が子猫を生むことで、猫エイズキャリアが増えてしまうこともあります。

—母猫がキャリアであれば、確実に感染してしまうのでしょうか?

 必ず感染するわけではなく、感染しないケースもあります。
 また、猫エイズキャリアの母猫から生まれた子猫は、猫エイズウイルスの「抗体」を持っているために、血液検査では陽性となっても、実際にはエイズウイルスを持っていない場合もあります。

猫エイズは感染力が弱いため、食器の共用などでは感染しません。

猫エイズは感染力が弱いため、食器の共用などでは感染しません。

—例えば、室内飼育の猫が脱走して野良猫と喧嘩をして帰ってきたような場合は、猫エイズに感染したかどうか、検査をするべきでしょうか?

 猫エイズに限らず、ケガをしたら動物病院で診察を受けてください。猫エイズウイルスに感染したかどうかは血液検査でわかりますが、感染直後には反応が出ません。一度陰性だと判断されても、1〜2ヵ月後の検査で陽性だとわかることもあります。

—猫エイズウイルスに感染したら、何らかの症状が出ますか?

 感染直後は「急性期」と言って、風邪のような症状が、長くて2ヵ月くらい出ます。その後は、発症しない限りは他の猫と同じように生活できます。

—猫エイズウイルスは、猫以外の動物には感染しないのでしょうか?

 猫同士でしか感染しません。また、犬エイズというものは存在しません。一般的に飼育されている動物の中で、“エイズ”になるのは猫だけです。
もちろん猫エイズウイルスは人間には感染しませんし、人間のエイズウイルスも猫には感染しません。

猫エイズを予防するためには?

—猫エイズウイルスの感染を予防することはできるのでしょうか?

 予防接種によって感染を予防することはできますが、基本的に猫エイズキャリアの猫に噛まれなければ、感染しません。
 室内飼育をしていれば、特にワクチンを打つ必要はないと思います。

 猫に必要なワクチンについては「猫を感染症から守るワクチン接種。種類、費用、副作用のリスクは?」 もあわせてご覧ください。

猫エイズワクチンが必要かどうか、獣医さんに相談しましょう。

猫エイズワクチンが必要かどうか、獣医さんに相談しましょう。

—どのような場合に、ワクチン接種が必要になるのでしょうか?

 どうしても家の外に出さなければならない事情がある方や、多頭飼育している猫の中に猫エイズキャリアがいる場合などですね。

 野良猫や捨て猫を保護したら、すでにキャリアだったというケースもあります。未去勢のオスは発情期に喧嘩をしやすいので、そのような猫を保護している場合は、他の猫への感染予防のためにワクチン接種が必要になることもあります。

 しかし、多頭飼育をしているとしても、咬傷事故がなければ猫エイズウイルスには感染しないうえ、100%予防できるワクチンではないことも考慮し、本当にワクチン接種が必要かどうか、かかりつけの獣医師に相談してください。

猫エイズの発症を防止するためには?

—キャリアの猫が発症した場合、どのような症状が出るのでしょうか?

 発症するとまず、リンパ節が腫れます。猫は喉や腋、膝の後ろ、足の付根などにリンパ節がありますので、そこが腫れていて気づくこともあります。

 また、口内炎ができて食事をしない、ぐったりしている、などの症状が出て飼い主さんが気づくこともあります。

—発症したら、どのような治療を行うのでしょうか?

 猫エイズ自体を治療することはできないので、基本的には痛み止めなどの対症療法です。ウイルスの活性を抑えるインターフェロンを使うこともありますが、劇的な効果を期待できるものではありません。

ストレスのない環境で過ごしていれば、発症リスクが低下します。

ストレスのない環境で過ごしていれば、発症リスクが低下します。

—キャリアであっても発症させないためには、どうすれば良いのでしょうか?

 一番大切なことは、ストレスのない生活を送ることです。清潔なトイレや水、栄養のある食事を与えること。騒音などのない、落ち着いた環境で過ごすこと。そして、愛情をたっぷりかけること。

 ストレスのない毎日を送ることで、免疫力を高く保つことができます。その結果、発症リスクを下げることにつながるのです。

 エイズキャリアの猫を飼育している飼い主さんは、猫が快適に生活できる環境を整えてあげましょう。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生

日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。

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