2018/03/01

愛犬が心臓病と診断されたら〜心臓病の治療や生活とは〜

2018/03/01

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 犬にとって心臓病は、決して珍しい病気ではありません。犬に多い心臓の病気はどのような症状なのか、治療法や予防法、そして心臓病と診断されたときに飼い主さんはどうすれば良いのかなど、獣医師の三宅先生にうかがいました。

犬に多い「僧帽弁閉鎖不全症」とは?

—犬が心臓病になるのは、よくあることなのでしょうか?

 そうですね。犬の心臓病は、珍しい病気ではないです。特に中年齢以降の犬によく見られます。

すぐにグッタリと疲れやすくなったら心臓病の兆候かもしれません。

すぐにグッタリと疲れやすくなったら心臓病の兆候かもしれません。

—犬によくある心臓病として、具体的にどのような症状があるのでしょうか?

 一番多いのは、「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」です。僧帽弁とは、心臓の左心室と左心房を分けている弁のことで、この僧帽弁が腫れて変性してしまうことできちんと閉まらなくなり、心臓が収縮したときに左心室から左心房に血液が逆流します。
 その結果、全身に血液が行き渡らず、疲れやすくなったり、咳などの症状が出ます。また、左心房に肺からの血液が流れにくくなるため、うっ血して胸水が溜まりやすくなります。

 右心室と右心房を分けている弁は「三尖弁(さんせんべん)」と言いますが、三尖弁はそれ単体で悪くなることは少なく、僧帽弁が悪くなった結果、三尖弁も悪くなるというケースが多いですね。
 三尖弁閉鎖不全症になると、全身から戻ってくるはずの血液が戻りにくくなり、腹水が溜まったりします。

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 その他の心臓病として「フィラリア症」があります。犬が、寄生虫のフィラリアに感染している蚊に刺されることで、体内にフィラリアの幼虫が入り、その後犬の体内でフィラリアが成虫になり繁殖して、肺動脈に寄生します。その結果、咳が出たり、腹水が溜まるなどの症状が出ます。

 フィラリアは、定期的に駆虫薬を飲んだり注射を打って予防をすることで、幼虫段階で駆逐することができます。最近はほとんどの飼い主さんが予防をしているので、フィラリア症にかかる犬は少ないですね。

 また「拡張型心筋症」という、心臓の筋肉の収縮する力が徐々に低下する病気もあります。咳が出たり呼吸が苦しくなるなどの症状が出ます。発症の原因は不明ですが、僧帽弁閉鎖不全症と比べると発症数はあまり多くはありません。

キャバリアは「僧帽弁閉鎖不全症」の発症例が多く見られます。

キャバリアは「僧帽弁閉鎖不全症」の発症例が多く見られます。

—なぜ、犬は心臓病になるのでしょうか?

 原因はわかりません。僧帽弁閉鎖不全症は小型犬に多く、特にキャバリアに多く見られますが、すべての犬種に起こりうる病気です。特に中年齢以降の犬に多いですね。キャバリアでは、遺伝的な素因があると考えられています。

 また拡張型心筋症は、ジャーマン・シェパード・ドッグ、ドーベルマン、セント・バーナード、グレート・デン、その他体重15kg以上の大型犬に起こりやすいと言われています。これは、3歳くらいの若年齢でも発症することがあります。

継続した服薬で、生涯病気とつきあっていく

—飼い犬にどのような症状が見られたら、心臓病が疑われますか?

 一番わかりやすいのは、疲れやすくなったときですね。散歩の距離が短くなったり、すぐに立ち止まる様子が見られたりしたら心臓病の可能性もありますが、単に「年のせい」だと考えて見過ごしてしまう飼い主さんも多くいらっしゃいます。
 ほかにも、ゼイゼイとした呼吸や咳をするようになったら、心臓病が疑われます。

—心臓病は、定期的な健康診断で早期発見できるのでしょうか?

 心臓病になると雑音が聞こえるので、聴診や、場合によっては心エコー検査などで早期発見することができます。

定期的な健康診断で、早期発見が可能です。

定期的な健康診断で、早期発見が可能です。

—心臓病だと診断されたら、どのような治療をするのでしょうか?

 僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症の場合は、基本的には薬による内科的治療です。腹水や胸水が溜まるようなら利尿剤を飲んだり、血管を拡張する薬や強心剤を飲んだりします。

 薬は“治す”ためではなく、あくまで症状を改善するためのものなので、心臓病の犬は生涯薬を飲み続ける必要がありますし、症状の進行に合わせて薬が増えていくこともあります。

 フィラリア症の場合は、虫を駆除する薬を飲んだり、以前は「つり出し法」と言って成虫を取り除く手術も行われていました。ただ虫がいなくなっても、寄生された部分は変性を起こしている可能性があるので、虫がいなくなった後も服薬が必要になることもあります。

—なぜ、薬の量を増やす必要があるのでしょうか?

 薬は、症状の緩和のための対症療法です。体内に余分な水が溜まってしまうための利尿剤や、血液を流れやすくする血管拡張剤、心臓の働きを強める強心剤など、症状に合わせて服用します。しかし症状が進行するに従い1種類の薬では抑えきれなくなったり、別の症状が出たりするので、さらに別の薬を服用することが必要になります。

心臓病による症状を緩和するための服薬は、一生涯続きます。

心臓病による症状を緩和するための服薬は、一生涯続きます。

—手術など、外科的治療は行わないのでしょうか?

 内科治療が一般的ですが、心臓の外科手術を行える獣医師もわずかではありますが、います。すべての心臓病で手術が可能なわけではなく、心臓の外科手術を行える獣医師の診察後、手術適応か否かが決定します。

—心臓病だと診断されたら、どのくらい生きられるのでしょうか?

 心臓病の進行具合にもよりますが、心臓病と診断されてもすぐに亡くなるのではなく、薬を飲み続けることで症状を緩和しつつ、生活の質を保ちながら過ごすことも可能です。

—一生涯薬を飲ませ続けるのは、大変な気がします。

 薬を飲ませ続けることは犬にとって可哀想だから、とあえて治療を選択しない飼い主さんも中にはいます。それも一つの考え方ですが、最終的に症状が進めば、犬が苦しむことになりますので、できれば薬が必要になったタイミングで飲み始めたほうが良いと思います。

肥満は心臓病にとって高リスク!健康的な体を維持しよう

—心臓病の予防として、できることはありますか?

 これはすべての病気に対して言えることですが、栄養バランスの良い食事をとり、適切な運動を行って、健康な体づくりをすることが予防の基本です。

 また定期的な健康診断で、できるだけ早期に病気を発見してあげましょう。早めに服薬治療を開始した方が、その後のQOL(生活の質)が良くなると言われています。
 それに加え、フィラリア症の予防としては駆除薬を定期的に飲むことが必要です。

—心臓病の犬は、日常生活でどのようなことに気をつければ良いのでしょうか?

 散歩は気分転換にもなるので良いですが、ドッグランなどで駆け回るのは控えましょう。
 またバランスの良い食事をして、肥満にならないように体重管理をすることが重要です。症状が進むと、ナトリウム量などが抑えられた療法食が使われることもあります。

心臓病と診断されたら、激しい運動は控えましょう。

心臓病と診断されたら、激しい運動は控えましょう。

—肥満は、心臓病にとってはリスクなのでしょうか?

 太っていると体が疲れやすくなりますし、心臓に過度な負担がかかります。心臓病の場合に限らず、肥満には注意しましょう。

 もし心臓病と診断されたらすぐに治療を開始して、獣医師の指示通りに服薬を継続し、バランスの良い食事で肥満を予防しながら、病気と末永く上手につきあっていく。その姿勢が、心臓病治療には大切です。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生

日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。

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