2017/10/24

獣医さんに聞く!猫の糖尿病。気をつけたい食事や生活環境

2017/10/24

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 厚生労働省の調査によると人間の糖尿病患者とその予備軍は約2,000万人(*)と言われていますが、糖尿病は人間だけの病気ではなく、猫がかかることも珍しくありません。今回は、猫の糖尿病の原因や症状、治療法について獣医師の三宅先生にうかがいました。

【出典】
*厚生労働省「平成28年 国民健康・栄養調査結果の概要」より
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf

なぜ猫が糖尿病になるの?

—糖尿病になる猫は多いのでしょうか?

 犬と比較すると、猫の方が糖尿病にかかる割合が高いと思います。また犬の場合はインスリンが欠乏してしまう「1型糖尿病」が多いのですが、猫の場合はインスリンが出ているが不足している、もしくは、インスリンが出ているが身体が反応しないことが原因となっており、人間の「2型糖尿病」によく似ています。

—なぜ、猫は糖尿病になるのでしょうか?

 人間でもそうですが、食べ過ぎや運動不足、肥満は原因の一つです。中でも食事には注意が必要で、猫は完全肉食動物のため高タンパク質、低炭水化物の食事が好まれますが、そこのバランスが崩れている食事を与えていることが影響しているかもしれません。
 また、膵炎から併発して糖尿病になることもあります。

肥満は糖尿病の原因の一つです。

肥満は糖尿病の原因の一つです。

—人間の場合、糖尿病は中高年からかかりやすいと言われますが、猫でもそうですか?

 猫も中年齢以降で発症しやすく、特に10歳前後からは要注意ですが、若くて発症することもあります。

—糖尿病は、暴飲暴食や不摂生な食生活でなりやすいというイメージがあります。

 食生活に気をつけることはとても大切ですが、気をつけていても糖尿病を発症してしまうこともあります。ただ、肥満にさせないように飼い主さんがコントロールしてあげることは是非おすすめしたいです。

猫の体に合った食事を選ぶことが重要

—猫が肉食動物であるなら、生肉だけを与えた方がよいのでしょうか?

 完全肉食動物である猫は、草食動物の肉だけでなく、胃腸なども含めた内蔵を食べることで植物性の栄養素を分解された状態で摂取してきました。ですから、筋肉である赤身肉だけでは十分ではありません。

—では市販のフードを選ぶ際は、どのような点に気をつければ良いのでしょうか?

 100%肉や内臓、血液などのプレミアムフードなどもありますが、なるべくタンパク質の含有量が多いものを選ぶように心がけると良いと思います。
 またドライフードとウェットフードを比べると、ウェットフードの方が本来猫の食べている食事の組成に近いので、特にドライフードである必要性がなければ、ウェットフードを選んだ方が良いでしょう。

水分の多いウェットフードは、本来の猫の食事に近い組成です。

水分の多いウェットフードは、本来の猫の食事に近い組成です。

—食事回数は制限した方が良いですか?

 いえ、本来猫の食事は、1度に少量ずつ、チョコチョコ何度も食べて空腹を満たすスタイルなのです。それを1日2回食のように一度に大量に食べると、血糖値が急激に上がってしまいます。可能であれば、食事を小分けにしてあげると良いですね。タイマー設定できる自動給餌器などもあるので、工夫してみてください。

—水分はたっぷりとった方が良いですか?

 糖尿病予防に限らずですが、水分はとっておいた方が良いでしょう。猫はあまり水を飲まない生き物なので、ウェットフードなどの食事で補うのをおすすめします。

 猫の餌については「猫の餌って何がいいの?適切な食事の回数、選び方から与え方まで」もあわせてご覧ください。

猫の糖尿病の症状と治療法

—猫が糖尿病になると、どのような症状が出ますか?

 一般的なのは、飲水量が増えて、それにともなって尿量が増える症状ですね。また発病の初期はよく食べますが、病状が進むと食欲不振、元気消失、嘔吐などがみられ、痩せていきます。毛艶が悪くなることで気づく飼い主さんもいます。

—糖尿病の治療は、どのようなことを行うのでしょうか?

 糖尿病とは、血糖を細胞内に取り込む働きのあるホルモン「インスリン」が十分に生成されなかったり、働きが悪くなることで、血糖値が高くなる病気です。その治療としては、血糖値をコントロールすることが最も重要です。
 まずは、食事を糖質の少ない糖尿病用の療法食に切り替えます。そして、不足しているインスリンを補うために、インスリンの投与を行います。

人間同様に、インスリン注射を打って血糖値をコントロールします。

人間同様に、インスリン注射を打って血糖値をコントロールします。

—人間だと自分でインスリン注射を打ちますが、猫の場合も家庭で行うのでしょうか?

 そうです。飼い主さんに練習していただいて、自宅で注射します。猫の場合は通院のストレスや緊張で血糖値が上がることが多いので、リラックスできる自宅で行います。

 インスリン注射を打つと血糖値が下がります。食事前に注射をし、その後適切な食事を行うことで血糖値をコントロールします。人間であれば、「注射を打ったから食事をしなくては」と行動できますが、猫だとちゃんと食事をしてくれない場合もありますよね。そうなると低血糖状態になってしまうので、コントロールが難しいです。

—インスリン注射は、その後一生行わなくてはいけないのでしょうか?

 食事で血糖値のコントロールが上手にできるようになれば、インスリン無しで生活できることもあります。

一番の予防は、適切な食事とストレスのない環境

—定期検診を受けていれば、早期発見できますか?

 尿検査をして尿糖が出ていたり、血液検査で血糖値が異常に高いということがあれば、再検査をして発見できる場合もあります。ただ、猫は興奮したり緊張やストレスを感じると血糖値が上がりやすいので、血糖値が高いからといってすべてが糖尿病というわけではありません。

できるだけリラックスして過ごすことも、予防や治療に大切です。

できるだけリラックスして過ごすことも、予防や治療に大切です。

—人間の場合、血糖値の上昇を抑えるお茶やサプリメントなどがありますが、猫の場合はどうですか?

 血糖値を抑える内服薬などを使用することもありますが、あまり大きな効果が期待できないため、基本的には療法食とインスリン注射での治療となります。

—そのほかに、家庭でできる予防法や治療はありますか?

 猫は、身の危険やストレスを感じると、血糖値が急激に上がります。糖尿病の予防や治療のためには、血糖値の上げ下げを穏やかにすることが大切です。できるだけストレスのない、穏やかな環境で過ごさせてあげられると良いですね。

 高タンパク質、低炭水化物の食事を心がけ、肥満にならないよう食事や運動に気をつけ、そしてストレスのない環境で過ごすことが、何よりの予防法だと思います。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生

日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。

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