2017/04/18

獣医さんに聞く!猫の腎臓病 原因・症状・治療について

2017/04/18

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 猫の死亡原因として上位に挙げられる「腎臓病」。なぜ、猫は腎臓病になるのでしょうか。腎臓病だと診断されたら、飼い主さんはどうすればよいのでしょうか。
 猫の腎臓病について、獣医師の三宅先生にうかがいました。

猫が腎臓病になる原因は?

本来砂漠の動物であったと言われる猫は、あまり水を飲みません

本来砂漠の動物であったと言われる猫は、あまり水を飲みません。

—猫は他の動物よりも腎臓病になりやすいと聞いたのですが、事実でしょうか?

 確かに腎臓病にかかる猫は犬よりも多く、7歳以上のシニア猫のうち3〜4割は腎臓病を患っていると言われています。

—なぜ、猫は腎臓病にかかりやすいのでしょうか?

 その原因は、よくわかっていないんです。
 人間であれば、腎臓病の原因として塩分の取り過ぎや糖尿病などがありますが、猫の場合は規則正しい食事をしていても、腎臓病になることがあります。

 いくら飼い主さんが気をつけて、良質な総合栄養食のみを適量与えていても、腎臓病になってしまう猫がいるのです。

 一説には、猫は元々砂漠の動物であったため、水分を有効に使うために尿を濃縮して排泄しています。それが原因で、犬よりも腎臓に負担がかかりやすいのでは、と言われていますが、実際のところはよくわかりません。

猫がかかりやすいのは「慢性腎臓病」

—「腎臓病」と一口に言いますが、猫がかかりやすい腎臓病は、具体的にはどんな病気でしょうか?

 猫がかかりやすいのは、「慢性腎臓病」です。その名の通り、気づかないうちにゆっくり進行していく病気です。腎臓が徐々に炎症を起こして線維化し、腎機能が衰え、最終的には機能しなくなります。

急性腎臓病は、毒素を排出できれば回復することもあります

急性腎臓病は、毒素を排出できれば回復することもあります。

—“慢性”腎臓病ということは、“急性”腎臓病もあるのでしょうか?

 急性腎臓病は、腎毒性のある食品や薬品を摂取したことが原因で、急激に症状が進む病気です。
 腎毒性がある代表的なものとしては、ユリやガソリンの不凍液(エチレングリコール)などがあります。
 また、尿結石などで尿が出せなくなったことが原因で、急性腎臓病になることもあります。

 そのような場合は、点滴や人工透析などで毒性の物質を排泄できれば、また体調が復活する場合もあります。

慢性腎臓病の症状や予防方法

—慢性腎臓病になると、どんな症状が表れますか?

 腎臓の働きは、体の中の老廃物を尿として排泄したり、体の中の水分バランスを整えたり、いくつかのホルモンを産生することです。
 腎臓の働きが悪くなると、水分バランスが悪くなるので尿の量が増えたり、水をたくさん飲むようになったり、脱水症状を起こしたりします。

 また、排泄されるはずの毒素や老廃物が体内に溜まってしまうので、気持ち悪くなって吐いたり、口臭がします。
 このような症状が出たときに、異常に気づく飼い主さんが多いですね。

定期検診で早期発見をすることは可能です

定期検診で早期発見をすることは可能です。

—予防方法はないのでしょうか?

 残念ながら、これと言った予防方法はありません。規則正しい生活を送っていても、腎臓病になる猫はいます。
 それでもやはり、良質な総合栄養食と新鮮な水を摂って、おやつは控えめに。そして定期的な健康診断を受けることが、まずは予防の第一歩だと思います。

—定期検診を受けていれば、早期発見することはできますか?

 可能です。血液検査や尿検査などをしていれば、早期発見できることもあります。
 早期発見できれば、進行を遅らせるような治療をすることができます。

医師の指導の元、療法食を与えることも治療の一つです

医師の指導の元、療法食を与えることも治療の一つです。

—親猫がかかると子猫もかかりやすい、などの傾向はありますか?

 腎臓病を起こしやすいといわれている品種は存在しますが、親がかかると子もかかりやすい、などの傾向については不明です。

慢性腎臓病の治療方法は?

—慢性腎臓病と診断されたら、どのような治療を行うのでしょうか?

 まず、慢性腎臓病は治りません。腎臓自体を治療するのではなく、嘔吐や脱水などの症状を抑える対症療法が中心となります。また、療法食を食べさせるように指導があります。
 その後は、かかりつけ医と相談して、定期的な検査を受けるようにしてください。

症状を和らげ、痛みやストレスを減らすことが治療の目的です

症状を和らげ、痛みやストレスを減らすことが治療の目的です。

—人間の場合、腎臓病の治療として人工透析や腎臓移植などがありますが、猫でもそのような治療は可能でしょうか?

 まず猫に行う透析には、人間同様の「血管透析」と、腹膜にチューブを挿して透析液を入れ、浸透圧で老廃物を引き寄せて流す「腹膜透析」があります。

 血管透析の設備を持っている病院は少なく、費用も高額なため、継続して行うことは大変困難です。
 また腹膜透析は、一般的な動物病院でも治療が受けられ、血管透析よりも費用はかかりませんが、腹部にチューブを入れたまま猫が生活しなければいけないため、感染症のリスクがあります。またチューブをいじらせないようにエリザベスカラーなどを装着しなくてはならないことから、猫にストレスがかかります。

 腎臓移植は大学病院などで行っているところもありますが、健康な腎臓を提供してくれるドナー猫をどうするか、などの問題もあります。不可能ではありませんが、現実的には難しいと思います。

 いずれも治療としては有効ですので、かかりつけ医に相談して判断してください。

—2017年1月に、猫の腎臓病治療薬が承認されたと話題になりました。どのような効果が期待されるのでしょうか?

 今回承認された「ラプロス®」という薬の成分は、人間では血流を改善させる目的として使用されていますが、それが猫の腎臓病にも効果があることがわかり、4月から発売されることになりました。

 前述したように腎臓は治る臓器ではなく、この薬で慢性腎臓病が治るわけではありません。しかし、腎臓に直接作用して慢性腎臓病の進行を遅らせる効果がある薬というのは今までなかったものなので、飼い主さんも獣医師も期待していると思います。

参照
「猫慢性腎臓病治療薬 ラプロス®の製造販売承認取得について」東レ株式会社
http://www.toray.co.jp/news/plastics/detail.html?key=93746DCF52C4544E492580AE0030736C

 愛猫が腎臓病だと診断されたら、飼い主さんはショックを受けるかもしれません。しかし猫の腎臓病は、一定の年齢を超えると避けては通れない病気の一つです。
 もし愛猫が腎臓病になったら、不快な症状を和らげ、少しでも長くストレスの少ない状態で過ごせるようしてあげることが、飼い主さんにできることだと思います。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生
日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。

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