2020/05/26

【獣医師監修】猫の鼻水やくしゃみの原因は?猫ウイルス性鼻気管炎とは

2020/05/26

【獣医師監修】猫の鼻水やくしゃみの原因は?猫ウイルス性鼻気管炎とは

 猫ウイルス性鼻気管炎は猫風邪の一種ですが、“風邪のような症状”が出るというだけでなく、重症化すると死に至ることもあります。
 今回は猫ウイルス性鼻気管炎の感染原因や主な症状、治療法から重症化しないための予防方法についてご紹介します。

猫ウイルス性鼻気管炎とは、どんな感染症なのか?

猫ウイルス性鼻気管炎の症状は、空気が乾燥しがちな冬に多くみられます。

猫ウイルス性鼻気管炎の症状は、空気が乾燥しがちな冬に多くみられます。

 猫ウイルス性鼻気管炎は、猫ヘルペスウイルス1型を原因とする上部呼吸器感染症です。また、上部気道感染症を起こす原因のおよそ50%~80%が、猫へルペスウイルス1型によるものと言われています。

  1. 潜伏後に発症する

     猫ウイルス性鼻気管炎の原因である猫ヘルペスウイルス1型は2~10日ほど体内に潜伏します。その後発熱、くしゃみ・咳・よだれが出るなどの症状からはじまり、目の充血や結膜の浮腫、目ヤニ、呼吸困難などの症状がみられるようになります。

  2. 重症化に要注意

     体力のある成猫の場合、軽症であれば1週間~2週間ほどで自然治癒しますが、幼弱な子猫や高齢猫が猫ヘルペスウイルス1型に感染すると重症化しやすく、特に生まれて間もない子猫の死亡率は70%以上とも言われています。

  3. 早期発見・早期治療が重要

     猫ウイルス性鼻気管炎は、猫カリシウイルスや気管支敗血症菌、クラミジアやマイコプラズマなどと混合感染した場合も重症化しやすいと言われています。重症化した場合、角結膜炎による失明や肺炎や膿胸、副鼻腔炎などを併発して、命に関わることもありますので、早期発見・早期治療が重要です。

  4. 治癒後も神経節に潜伏し再発することも

     猫ヘルペスウイルス1型は治癒後も神経節に潜伏し体が衰弱すると再発することもあります。無症状なものの潜伏感染した状態をキャリアと言い、このキャリア猫のおよそ半数がストレスや妊娠など、免疫力が落ちた時に再発します。

猫ヘルペスウイルス1型の感染経路

唾液などの微量な分泌物からでも、簡単に感染します。

唾液などの微量な分泌物からでも、簡単に感染します。

  1. 感染猫との接触、飛沫感染

     猫ヘルペスウイルス1型に感染した猫との接触、くしゃみや咳などによる飛沫感染があります。例えば、母猫が猫ヘルペスウイルスキャリアの場合、妊娠ストレスで再発し、子猫は授乳やグルーミングを受けることで感染します。

  2. 間接的感染

     猫同士がグルーミングや食器やおもちゃを共有することで感染する場合があります。また、人が猫ヘルペスウイルスに感染した猫に触れたあとに、皮膚や衣服を介して、ほかの猫に感染させてしまうこともあります。動物病院などで愛猫を外に連れて行った場合には、キャリーなどの消毒をおすすめします。

猫ウイルス性鼻気管炎の予防方法

ワクチン接種を行うことが一番の対策方法になります。

ワクチン接種を行うことが一番の対策方法になります。

 猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス)の予防には、ワクチン接種をおすすめします。猫の混合ワクチンには複数の種類があり、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス)のワクチンはすべての種類に含まれています。愛猫が室内飼いの場合は「3種混合ワクチン」、外出をする場合は「5種混合ワクチン」が良いでしょう。

ワクチンの接種時期

抗体ができるのは、ワクチン接種してからだいたい2週間ほどかかります。

抗体ができるのは、ワクチン接種してからだいたい2週間ほどかかります。

  1. 生まれて間もない子猫の場合

     1回目のワクチン接種は生後60日前後ごろ、2回目のワクチンは1か月後の生後90日前後に接種すると良いでしょう。

  2. 成猫の場合

     成猫の場合は、1年に1回のワクチン接種が推奨されています。飼い始め時の猫の体質や年齢、生活環境によって最適な接種のタイミングや頻度は異なるため、動物病院で相談しましょう。

ワクチン接種の費用

愛猫の健康を守る為に、予防接種や健康診断に行きましょう。

愛猫の健康を守る為に、予防接種や健康診断に行きましょう。

 日本獣医師会が平成27年度に発表した家庭飼育動物の診療料金実態調査では、猫の混合ワクチン料金の中央値は、猫白血病ウイルス(Felv)を含まない3種混合ワクチンで4,474円、含まれる5種混合ワクチンで6,514円という結果が発表されています。地域や動物病院によって多少異なりますが、愛猫のためにも接種しておくことをおすすめします。
 ワクチン接種ついては詳しくは「猫を感染症から守るワクチン接種。種類、費用、副作用のリスクは?」もご覧ください。

猫ウイルス性鼻気管炎の治療方法

重症化する前に、早期発見と早期治療が大切です。

重症化する前に、早期発見と早期治療が大切です。

 愛猫が猫ウイルス性鼻気管炎になってしまったら、動物病院で適切な治療を受けることが大切です。

  1. 治療方法

     点滴や栄養補給と、二次感染防止の抗生剤投与といった対症療法が一般的です。その他の治療としては抗ウイルス薬やL-リジンなどによるウイルス増殖抑制、インターフェロンの投与など免疫を活発にする治療などが行われます。

  2. 自宅でのケア

     愛猫の食欲がない場合であっても、なるべく高栄養な食事を用意し食べるように促します。さらに室内の保湿に気を配り、脱水を防ぐため十分な水分補給をしてあげましょう。特に子猫は鼻水やよだれ、涙などで顔周りが汚れやすいので、蒸らした温かいタオルなどでこまめに拭いてあげましょう。

 猫ウイルス性鼻気管炎は、一度感染すると繰り返し症状が出ることも多いため、混合ワクチンの接種や感染原因を断つことが大切です。

白神久輝先生
監修 /
白神 久輝 先生
 埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主さんにもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。
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