2021/07/02

犬の下痢の原因と対処法を獣医師が解説!嘔吐・血便には要注意?

2021/07/02

犬の下痢の原因と対処法を獣医師が解説!嘔吐・血便には要注意?

 愛犬が下痢をする原因には生活環境の変化や食事の消化不良によるものもあれば、子犬の下痢は寄生虫の可能性も考えられます。また下痢だけではなく、血が混じる・嘔吐するなどの症状がみられる場合は病気の可能性が考えられます。
 さらに下痢の性状にも注意が必要です。こうした下痢や便の変化から疑われる原因や病気について、獣医師の三宅先生にうかがいました。

犬の「正常な便通」と「便秘」

—まず、犬の便通の「正常な状態」について教えてください。

 便の回数は、犬によって個体差がありますが、毎日便が出ていれば正常と考えていいでしょう。
 お散歩でしか排便しない犬と、室内のトイレで自由に排便できる犬とでは回数に違いがあったり、便をして飼い主さんに褒められた経験があると何度も小分けにして排便する犬もいるんですよ。

室内のトイレを利用する犬の場合は、毎食後に排便することもあります。

室内のトイレを利用する犬の場合は、毎食後に排便することもあります。

—では、犬の「便秘」はどのような状態でしょうか?

 しっかり食べているのに2~3日排便がなければ、便秘状態だと言えます。お腹をマッサージしてあげたり、水分を多く取るためにウエットフードを与えたりするのもいいでしょう。苦しそうにいきんでいる様子が見られたら、受診を検討しても良いでしょう。

—犬が便秘になる原因は何でしょうか?

 何らかの疾患により腸の動きが悪くなることもありますが、多くの場合は食事バランス、運動不足などが原因でしょう。ストレスが関与していることもありますし、室内にトイレを置いている場合、トイレの場所が落ち着かずに便秘になることもあります。
 また、年を取って踏ん張る力が弱ってくると、排便しにくくなって便秘になりやすくなります。

犬が「下痢」をする原因は?

—犬は、人間より胃腸が強いからあまり下痢をしないという印象がありますが、実際はどうなのでしょうか?

 犬は人間より胃酸が強いとは言われていますが、胃腸が強いとは言えません。お腹を壊して下痢をすることは決してめずらしいことではありません。

—生まれつき下痢をしやすい犬種はありますか?

 胃腸が弱いなどの個体差はありますが、犬種によっての違いはありません。

—犬は、どのような原因で下痢をするのでしょうか?

 胃腸炎などの病気である場合を除くと、急激な温度変化、食事の変化や体質に合わない食事を与えている、過度のストレスなどが原因です。
 食べムラがあるからと頻繁にフードを変えていると、消化が追いつかなくなって下痢をしやすくなります。
 また、子犬の下痢は、寄生虫が原因のこともあります。

子犬が下痢をしているときは、もしかしたら寄生虫がいるかもしれません。

子犬が下痢をしているときは、もしかしたら寄生虫がいるかもしれません。

—寄生虫は、子犬にしかいないのですか?

 子犬にしかいないというわけではありませんが、子犬がたくさんいる環境下で感染することが多いですね。
 家に迎えたばかりの子犬が下痢をするような際は、動物病院で便検査をしてもらうと安心だと思います。

—人間はノロウイルスやロタウイルスなどにかかって下痢をすることがありますが、そのような人間の病気が犬にうつることはありますか?

 ノロウイルスやロタウイルスは犬にも感染しますが、人間に流行しているウイルスと犬が感染するウイルスでは型が違うので、人から犬、犬から人への感染は通常ありえないといわれています。

「下痢」は病気のサイン?

脱水状態や胃腸炎が疑われるときは、受診が必要です。

脱水状態や胃腸炎が疑われるときは、受診が必要です。

—どのような下痢をした場合に、動物病院に連れて行くべきでしょうか?

 正常な排便回数だけど便が柔らかい、といった場合はあまり心配いりません。
 排便回数が増えたり、水様性の下痢をしている場合は、脱水などを起こすおそれもあるため、受診したほうが良いでしょう。
 また、下痢だけではなく嘔吐が見られる場合や、出血が目立つような下痢の場合も受診が必要です。

—便に血が付いているとしたら、どのような状態が考えられますか?

 便に鮮血が付いている程度であれば、肛門に近い部位からの少量の出血であるためさほど心配いらないケースがほとんどです。
 しかし、下痢の様子が赤い液体もしくは赤いジャムのような形状をしているときは、出血性胃腸炎という病状のおそれがあるためすぐの受診が必要です。
 また、血の色がどす黒い場合は、出口である肛門から遠いところで出血している可能性が高いため、胃や十二指腸などに問題がないか調べる必要があります。

—受診の際、下痢をした便を持っていった方が良いですか?

 受診の直前に出た便が採取できるのであれば、中にどのような細菌がいるのかなどを調べることができますね。
 しかし、便を持参できない場合でも、獣医さんは肛門から細い綿棒のようなものを入れて便の一部を採って検査することができますので、特に問題ありません。

–下痢をしているときは、消化に良いフードに変えたほうが良いですか?

 特別に獣医さんからの指示がない場合は、食べ慣れているいつものフードの方がいいですね。

日々の「便」で健康状態をチェック!

健康な状態の便通を把握しておくと、ちょっとした変化にもすぐに気付けます。

健康な状態の便通を把握しておくと、ちょっとした変化にもすぐに気付けます。

—日々の便の状態から健康状態をチェックするとき、どのような点に注意すれば良いでしょうか?

 まずは便の固さです。いつもより柔らかい場合は、食べ過ぎで消化不良になっている、フードやおやつが合っていない、消化酵素が足りていない、などが考えられます。
 便の色は、濃い茶色~黒っぽいものはよく消化した便ですが、先ほどもお話したように、出血があるとその部位によって鮮血~どす黒い色になります。
 次に形です。急に平べったい便や細い便をするようになったら、便の通り道である腸のどこかが、腫瘍やヘルニアなどにより狭くなっているおそれがあります。

 また、普段と比べて出しづらそうにしていたり、いきんでも出ないようなときは、獣医さんに相談してみましょう。

便は健康のバロメーター。普段の様子をしっかりと観察して、何か変化があったらすぐに気付けるようにしておけると良いですね!

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生
日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。
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