2016/11/15

猫の餌って何がいいの?適切な食事の回数、選び方から与え方まで

2016/11/15

猫の餌って何がいいの?適切な食事の回数、選び方から与え方まで

 カリカリ(ドライフード)や缶詰、様々なおやつ。いろいろな猫のエサがありますが、猫の体にとって、何をどれだけ食べるのが一番良いのでしょうか?
 猫の適切な食事内容と食事習慣について、獣医師の三宅先生にうかがいました。

猫のエサの「適正量」とは?

—猫のエサは、どのくらいの量を与えるのがちょうど良いのでしょうか?

 現状の体格が適正であれば、与えているフードのパッケージに書かれている分量とカロリーを参考にして与えるのが一番良いですね。

—食べることが好きな猫や少食の猫の場合は、分量を調整しても大丈夫ですか?

 与えた量をすぐに食べきってしまい、もっと欲しがったとしても、追加で与える必要はありません。あくまで、適正な量、適正なカロリーを守ってくださいね。

 あまりエサを食べない場合は、より好みをしているだけであれば放っておけば自然に食べますし、食が細いのであれば、エサの種類を変えて食べやすいものを探してあげるのも良いでしょう。

 ただ、単に少食だと思っていたら実は胃腸炎などの病気だった……という場合もあります。あまりにも食べなかったり、下痢をしていたり、痩せてしまったら受診が必要です。

猫のエサは、1日の摂取カロリーを守って与えましょう。

猫のエサは、1日の摂取カロリーを守って与えましょう。

—ドライフードとウェットフードは、どのように使い分ければ良いでしょうか?

 1日の摂取カロリーが守られていれば、どちらでも構いません。ただ、ウェットフードは水分を多く含んでいるので、あまり水を飲まない猫や泌尿器系の病気を持っている猫には良いですね。

 また水分が多いウェットフードは、ボリュームに対してカロリーが低いので、満腹感があります。すぐにお腹が空いてしまう猫には、ウェットフードが向いているかもしれません。

バランスのとれた「総合栄養食」を与えましょう!

—ドライフードやウェットフード、おやつも様々な種類が販売されていて、どれをあげようか迷ってしまいます。

 ドライしか食べない猫もいれば、ウェットを好む猫もいます。それは、猫の好みに合わせて構いません。

 気をつけてほしいのは、ドライでもウェットでも、「総合栄養食」を与えることです。

猫の基本的な食事には「総合栄養食」を選びましょう。

猫の基本的な食事には「総合栄養食」を選びましょう。

—総合栄養食とは、どのようなものですか?

 総合栄養食とは、人間にとっての「定食」のようなもので、そのエサと水だけで猫が健康を維持できるフードのことです。

 総合栄養食を食べていれば、バランスの良い栄養が摂取できます。ドライでもウェットでも、必ずパッケージに記載がありますので、購入する際には確認してください。

—総合栄養食の他に、「一般食」と記載されているフードもあります。

 一般食とは、人間にとっての「おかず」のようなもので、これだけでは栄養バランスは取れません。一般食をあげるのであれば、その分のカロリーを総合栄養食から減らす必要がありますので、あげすぎには注意しましょう。

猫の食事は1日4~6回に分けて!

—食事を与えた時、食べきれなかったものはすぐに下げたほうがいいですか?

 猫は一度にたくさん食べるというより、チョコチョコ食べて小腹を満たす動物です。
 ドライフードなど、置いても傷まないものであれば、すぐに下げずにそのままにしておいても良いでしょう。

あればあるだけ食べてしまう猫もいます。小分けにしてあげましょう。

あればあるだけ食べてしまう猫もいます。小分けにしてあげましょう。

—猫の食事は、1日何食でしょうか?

 猫は犬のように1日2食にするよりも1日に必要な摂取カロリーを4~6回に分けて与えるのが良いでしょう。

 食事の回数が少ないと、空腹の時間が長くなりお腹が空き過ぎてしまうので、十分な量を与えても「足りない!」と追加を要求したりします。
 少量ずつ数回に分けて食べていれば常に小腹が満たされているので、食べ過ぎることもありません。

 出せば出すだけ食べてしまう猫の場合は、たとえばボール状で転がすとドライフードが出てくるような容器や、タイマー式の給餌器を使用するなど、食べすぎないような工夫をしましょう。

猫の年齢に応じた食事とは?

食欲が無くなったのは、年齢のせいではなく病気かもしれません。

食欲が無くなったのは、年齢のせいではなく病気かもしれません。

—猫の年齢に合わせて、フードの種類を変えたほうが良いでしょうか?

 年齢別フードを与えている飼い主さんは、年齢に合わせて変えていったほうが良いです。一方で、全ての年齢の猫用というフードもあります。

 フードの種類を変えるときは、一気に変えてしまうと食べなかったり、消化不良を起こしてしまうかもしれませんので、少量ずつ混ぜて、徐々に切り替えていくのが良いでしょう。

—年をとると、歯が弱くなったりして固いフードが食べられなくなりますか?

 歯で噛み砕いて食べるのを好む猫もいますが、基本的には人とは違い、よく咀嚼して物を食べるわけではありません。だから、仮に歯がなくても食事に影響はありません。
 ただ、ボロボロ食べこぼしてしまい、食べづらくなることはあります。そうなったら、柔らかいものに変えてあげても良いかもしれませんね。

—年齢とともに食事の量は減りますか?

 特にそのようなことはありません。もし急に食事の量が減ったら、年齢のせいではなく病気かもしれませんので、注意が必要です。

太りすぎ・痩せすぎは「ボディコンディションスコア」でチェック!

—どの程度太ってしまったらダイエットが必要ですか?

 適正体重は骨格によって異なるので、一概には言えません。
 猫にとってベストの体型は、ウエストにくびれがあり、皮下脂肪の下に肋骨が触れて、横から見てお腹がたるんでいない状態です。

 「ボディコンディションスコア」という見た目の指標があり、「3」の状態をキープすることが望ましいです。

ボディコンディションスコア

【出典】
アメリカ動物病院協会(AAHA)栄養評価 犬・猫に関するガイドライン
https://www.aaha.org/globalassets/02-guidelines/nutritional-assessment/nag_japanese_color.pdf

—太り過ぎた場合、ダイエットはどのように行えば良いでしょうか?

 基本的には、今の体重での適正カロリーではなく、「適正体重における適正カロリー」を与えることが重要になります。しかし食事量が急に減ると肝臓に負荷がかかり危険です。
 そのため、かかりつけの獣医さんとよく相談し、食事量や、毎月どれくらいずつ体重を減らすことを目標にするかなどを相談して、無理なくすすめましょう。

—多頭飼育の場合、それぞれの食事量を把握するのが難しい場合もあります。

 食べる速度が違って他の猫の分まで食べてしまう、また処方食など猫によって食べるエサの種類が違う場合は、別室でエサを与えるなどの工夫も必要になりますね。

—運動量を増やすことも大切ですか?

 そうですね。たとえばキャットタワーの一番上にエサを置くなど、エサを食べるために運動が必要な環境を作っておくと、自然に消費カロリーが増えるでしょう。

エサの手作りは、猫の健康に良い?悪い?

手作りのエサだけでは、栄養バランスが偏ってしまいます。

手作りのエサだけでは、栄養バランスが偏ってしまいます。

—鶏のササミや野菜などを茹でて、エサを手作りする飼い主さんもいらっしゃいますが、栄養バランス的にはどうでしょうか?

 市販の総合栄養食に、トッピング程度に与えるのであれば特に問題はありませんが、猫のエサをすべて手作りするのは、栄養学の知識がある方でないとかなり難しいと思います。

 猫は肉食動物です。私たち人間が食べる「肉」は筋肉の部分ですが、肉食動物にとっての「肉」には内臓や血液も含まれていて、草食動物の胃の内容物や血液などをすべて含めて摂取することで、栄養バランスを保っています。
 それを茹でたササミと野菜で代用するのは、とても難しいことだと思います。

 添加物や保存料が心配、愛情をかけてあげたい、新鮮なものを食べさせてあげたい、など様々な思いから、手作り食を与えている飼い主さんもいらっしゃると思います。

 そのような場合は、定期的に血液検査を含む健康診断を受けて、健康が維持できているかどうかを確認することも大切だと思います。

人間の食べ物を与えるのはやめましょう!

—人間が食事をしていると、猫が食べたがります。どの程度なら与えても良いでしょうか?

 できれば全く与えないでもらうのが理想です。人間にとってみればたった一口、一切れかもしれませんが、体重が人間の1/10~1/20の猫にとっては、かなりの高カロリーです。
 肥満につながりますし、また誤食の危険性も高まります。

人間の食べ物は、猫の健康にとって有害なものがほとんどです。

人間の食べ物は、猫の健康にとって有害なものがほとんどです。

—「誤食」とはどのようなことでしょうか?

 人間の食卓から食べ物を与えていると、猫は食卓の上のものを食べても良い、と勘違いします。
 人間側は、猫にあげても良いもの、悪いものを理解していますが、猫自身は区別ができず、何でも口にしてしまうのです。

 「猫は自分の体に悪いものを知っているから、自分からは食べないだろう」と思われる方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。美味しそうだと感じたら、たとえ体に毒でも食べてしまいます。
 肥満防止、そして誤食防止のために、猫用のフード以外のものを与えるのはやめましょう。

猫にとって「危険」な食べ物とは?

—先日アボカドが犬猫に良くないというニュースを見ました。その他に、特に危険な食べ物はありますか?

 有名なのは、チョコレート、ネギ類ですね。その他にもアルコール、カフェインなどにも注意が必要です。
 また、薬局で売られているような人間用の鎮痛剤の誤飲などもとても危険です。

 その他には、ブドウ、ナッツ類、最近報道されたアボカドなどもありますが、これらに関しては、あくまで「食べた後に症状が起こったケースがあった」ということなので、個体差によるところも多いでしょう。

 「猫の好物といえば魚」という印象がありますが、煮干などは塩分が強いため、あまり与えすぎないほうがいいでしょう。
 また、マグロなど大型の魚は水銀の含有量も多いため、積極的にマグロばかりを与えるのもおすすめできません。

 日本のような島国や港町など、魚が身近な存在である場所で生きている猫たちは魚を食べますが、そもそも猫は砂漠の生きものだったと言われていて、魚を食べる習慣はなかったと思われます。

猫草を食べるか食べないかは、個体差があります。

猫草を食べるか食べないかは、個体差があります。

—野菜類なら大丈夫ですか?

 野菜は尿のpHを変えてしまうことがあるので、尿石症を起こしやすい猫にとっては危険です。

 白米は体に悪いわけではありませんが、炭水化物は本来猫にとって積極的に取る必要はありませんし、 肥満の原因にもなります。

 鉢植えの猫草を食べる猫もいますが、葉っぱを食べたくて食べているというよりは、胃がムカムカしているときなどに吐きやすいために食べている猫が多いです。

—食卓にあるもの以外で、誤食すると危ないものはありますか?

 観葉植物には毒性の強いものがありますので、猫を飼う方は部屋の中に置かないほうが良いですね。あじさいやユリ、ポインセチアなども危険です。

—虫や鳥を捕まえて食べてしまう猫もいます。

 基本的に、虫は毒があるもの以外はさほど心配する必要はないと思いますが、虫や小動物、鳥などから感染する寄生虫などもいるため、食べてしまうのはできれば避けたいですね。

—もし危険なものを誤食してしまったら、どのように対応すればよいですか?

 すぐに動物病院に行ってください。猫に対して、人間のように吐かせたり水を飲ませたりすることは、ご家庭では難しいです。

 症状が出るか出ないかは、個体差があります。たくさん食べても症状が出ない猫もいれば、少量でも重篤になる猫もいます。

 もし9割の猫が大丈夫だったとしても、自分の愛猫が残りの1割になってしまう恐れはあります。

 夜間の場合は、まずは夜間病院に電話で問い合わせてみましょう。
 猫の食事で一番大切なことは、栄養バランスの取れた総合栄養食を、適正カロリーで与えることです。
 肥満は万病の元。可愛いから、欲しがるからとおやつや人間の食べ物を与えてしまうと、結果的に愛猫を苦しめることになってしまうのです。

 大切な猫の健康を守るためにも、バランスの取れた、適量の食事を心がけてくださいね。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生
日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。

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